りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ブラック・ヴィーナス(アンジェラ・カーター)

著者の紹介に「イギリスを代表するマジック・リアリズムの旗手」とありましたが、本書を読んだ印象は「ブラック・ファンタジー」でした。もっとも現実と非現実のあわいを軽々と飛び越えることでは、両者に違いはないのですが。

 

「ブラック・ヴィーナス」

クレオール出身のボードレールの愛人、ジャンヌ・デュバルは、彼から移された梅毒で惨めに亡くなったのでしょうか。実は彼女は生き延びて恐ろしい復讐を行い続けたのかもしれません。

 

「キス」

アラビアンナイトのように語られる物語。モスク建築家に騙されたハーレムの女は、結局のところ自由を手に入れたようです。

 

「わが殺戮の美女」

ランカシャーの娼婦は、罪を犯して新大陸のプランテーションでの囚人労働を言い渡されます。しかし彼女の運命はまず荒野のインディアンたちによって、次いでインディアン部族を殺戮した白人によって切り開かれるのです。

 

エドガー・アラン・ポーとその身内」

27歳のポーと結婚した従妹のヴァージニアは、その時はだ13歳。2人ともプロテスタン国家であるアメリカ合衆国の光に照らされて吹き飛んでしまう運命にあったのですが・・。

 

「『真夏の夜の夢』序曲と付随音楽」

シェイクスピアの物語が始まる前の妖精の森。両性具有の黄金の彫像ゴールデン・ハームは、いたずら者の妖精バックと不謹慎な恋をしていたようです。

 

ピーターと狼

まさかここで狼に育てられた少女が登場するとは! そしてピーター少年に自由の意味を考えさせるとは!

 

「キッチン・チャイルド」

公爵家の女料理人はどのようにしてセレブ婚にこぎつけることができたのでしょう。彼女が作る天才的に美味しいスフレを食べてみたい!

「フォール・リヴァー手斧殺人」

娘が両親を手斧で殺害するという残酷な童謡は「マザーグース」の1編ですが、実はアメリカで起こった未解決殺人事件がベースとなっています。著者はなんと、この事件を解決してしまいました。

 

2022/10