りぼんの読書ノート

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GOSICK 2 その名は罪もなき(桜庭一樹)

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第一次大戦後のヨーロッパの架空の小国ソヴュールを舞台にして、ホームズ役のゴスロリ少女・ヴィクトリカと、ワトソン役の東洋からの留学生・久城一弥が活躍する「ゴシック・ミステリ」の第2作です。第1作で謎とされていた、ヴィクトリカの出生の秘密とは何だったのでしょう。

「灰色狼の末裔に告ぐ」という新聞広告を見たヴィクトリカは、学園を抜け出して山奥の小さな村へと向かいます。当然のように、彼女の後を追う一弥。実は、人間の姿態を有する灰色狼が住むという伝説が残る村は、ヴィクトリカの母親コルデリアの出身地だというのです。かつて殺人の容疑をかけられて村から追放された母親の容疑を晴らそうと、ヴィクトリカは20年前の事件の捜査を始めます。

厳格な性格で予言能力を持つ村長のセルジウス。次期村長候補でありながら外界に興味を持つアンブローズ。神経質で病的な雰囲気を持つメイドのハーマイニア。横溝正史の作品のように外界から孤絶された村の住民たちは、誰もが一癖ありそうです。胡散臭いシスター姿のミルドレッドや、美術大学の学生たちなど「灰色狼の子孫たち」が集まるとされる「夏至祭」にやってきたメンバーも微妙に怪しいですね。やがて、過去の事件と呼応するような惨劇が起こるのでした。

例によって「混沌の欠片」を「知恵の泉」で再構成するヴィクトリカの推理は冴えわたりますが、自分も山奥の村に来ているので、安楽椅子状態というわけにはいきませんね。彼女にも迫ってくる犯人の魔手の前に、一弥は身体を投げ出すのですが・・。

一弥がセルジウスに訪ねた「これからもヴィクトリカと一緒にいられるか」という問いに対する、「世界を揺るがす強い風によって二人は離れ離れになるだろうが、心は決して離れない」という予言も気になります。「強い風」とは、16年後の世界大戦のことなのでしょうか。そういえば第1巻の冒頭は、第一次大戦が始める予言でした。

2017/1