りぼんの読書ノート

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アメリカ西部開拓博物誌(鶴谷寿)

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昨年、新型インフルエンザのせいで幻に終わったサンフランシスコ・ヨセミテ旅行を計画していた際に、シェラネバダ近郊に点在している「ゴールドラッシュ関連史跡」が気になっていたので、遅まきながら関連書籍を探してみました。

アメリカ独立前に西部奥地へと入っていた白人は、主にフランスの毛皮商人でしたが、映画「ラスト・オブ・ザ・モヒカン」で描かれた「7年戦争」にイギリスが勝利を収め、さらに1803年にナポレオンがルイジアナを手離したことから、フランス系の勢力は主役の座から降りることになります。

翌1804年には「ルイス・クラーク探検隊」がミズーリ川からコロンビア川経由でオレゴン州に至り、陸路での大陸横断を果たしました。さらにメキシコから独立したテキサス・カリフォルニアの獲得を経て、1848年にゴールドラッシュが起こります。南北戦争後の退役軍人や新移民らが西部へと向かう「西部開拓時代」を迎え、1890年にはフロンティア消滅宣言。その間、1869年には大陸横断鉄道も開通。

この時代に情勢された「フロンティア・スピリット」は、今もアメリカの国民気質とされているほど、国家の骨格を形作った重要な時代だった訳ですが、本書はこの時代の「西部開拓」について、街道の歴史、騎兵隊とインディアンとの戦闘、大陸横断鉄道、中国から次いで日本からの移民労働者の苦労、さらには文学や映画に登場する「西部」の紹介に至るまで、多くのエピソードを交えて多面的に描き出してくれます。まさに「博物誌」。^^

「西部開拓史」とは、いわばインディアン殺戮と土地強奪の歴史でもあった訳ですが、本書は「征服」の主要な道具となった2つの発明についての考察で締めくくられます。皮肉にも「ピースメーカー」と愛称された連発ピストルによってインディアンの弓矢は優位性を失い、「悪魔の帽子飾り」と呼ばれた有刺鉄線によって土地が囲い込まれてしまったのですね。

アメリカ西部をドライブすると、あちこちに「西部開拓」の史跡が残されていたのを思い出しながら読みました。

2010/9