りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ラスト・チャイルド(ジョン・ハート)

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少年ジョニーの家庭は、双子の妹アリッサが誘拐されて崩壊してしまいました。優しく逞しい父は謎の失踪。美しい母は薬物に溺れるようになってしまったのです。13歳の少年ジョニーは家庭の再生を信じて、ひとりで妹の行方を捜し続けます。

一方で、この事件にのめりこんだあまりにジョニーの母キャサリンに特別な感情を抱くようになった刑事ハントも、妻に去られ、息子との関係は悪化。ここでも、違う形での家庭崩壊が起きています。

やがて事件は動き始めます。殺害された大学教授が残した「あの子を見つけた」という謎の言葉。脱走した服役囚が犯した殺人事件と、彼が包帯としていた布に記された妹の名前。第二の少女誘拐事件と、ジョニーが目をつけた性犯罪常習犯との関係。さらに、警官と思われる共犯者の存在・・。

ジョニー少年とハント刑事が次々と出会う事件や、彼らが見出す新たな事実は、読者の想像を上回る意外な展開となり、前2作を上回るリーダビリティですが、この人の作品の本質が「家族の崩壊と再生」にあることには、変わりありません。やがて彼らが見出すものは、また別の、崩壊した家族の姿でした。

事件の真相は「なんともやりきれないもの」でしたし、ジョニーの家族の再生は多くの読者が期待する形とは違っていたかもしれません。それですら、ちょっとした「奇跡」が必要だったのですが・・。

第1作のキングの死は、スコット・トゥローばりの法廷小説でしたが、第2作の川は静かに流れから、第3作である本作品へと進むに連れて迫力が増してきました。「巨匠」への道を歩みつつあるようです。

2010/7