りぼんの読書ノート

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ぼくは怖くない(ニコロ・アンマニーティ)

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1978年の夏。民家がたった5軒しかない南イタリアの貧しい集落に暮らす少年ミケーレが、恐ろしい事件に巻き込まれます。子供たちの間の罰ゲームで行かされた、廃屋の裏にある穴の中に閉じ込められた少年を発見してしまうのです。

深い闇の中で自分はもう死んでいると思い込んでいた少年フィリッポは、彼に声をかけてくれたミケーレを守護天使と呼びます。しかしそのことは、ミケーレを暗い立場に追い込んでいくのです。ミケーレは大人たちの会話を盗み聞きして、フィリッポは身代金目当てに誘拐された少年であること、しかもその誘拐には両親を含む村の大人たちが皆、関わっていることを知ってしまうのです。やがて誘拐は失敗へと向かい、大人たちは証拠隠滅のためにフィリッポを殺害しようと企てるのですが・・。

著者は、誘拐されたフィリッポはミケーレの分身であると語っているようです。ミケーレはフィリッポと出会うことによって、大人たちが絶対的な存在ではないことを知り、両親も罪を犯して怖れていることを見抜いた上で、罪深き父親をも許そうとするのです。少年の通過儀礼などと言ってしまうには、あまりに陰惨な結末なのですが、読後感は決して暗くはありません。

1978年と言うと、イタリアでは前首相の誘拐殺人事件が起こるなど、社会不安が増大していた時期に当たります。もちろん南北の経済格差は激しく、ミケーレの村の貧しさは随所に表現されています。この年に12歳の少年であった著者の記憶も反映されている作品なのでしょう。

2018/9