りぼんの読書ノート

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風神雷神 雷の章(柳広司)

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琳派の祖」と呼ばれる俵屋宗達が、鬼才を開花させていった過程を描いた作品です。上巻にあたる風の章では、琳派誕生の瞬間ともいえる「嵯峨本」製作までの物語が綴られました。後半の「雷の章」では、朝廷・幕府間の調整役であった名門公卿の烏丸光広が登場してきます。

本書では、宗達の絵画第1号は「養源院の杉戸絵」だったとされています。浅井家の菩提寺として淀君が創建した養源院は、徳川秀忠正室となっていた妹のお江が再興する時点では、微妙な位置づけであったようです。御用絵師の狩野派が装飾を断ったため、烏丸光広が目を付けたのが宗達でした。

光広に重用されるようになった宗達は、町絵師としては異例の法橋の位を与えられ、禁中の名品の模写を許されるようになります。古今東西のあらゆる技法を学ぶ機会を得たことが、彼のオリジナリティを研ぎ澄ませていったのでしょう。皇室・公卿・大寺院・大名からの依頼も増え、「源氏物語関屋図・澪標図」などの多くの名作を描いていきます。そして「醍醐の花見」で始まった物語は、同じ醍醐寺で幕を降ろします。

宗達の妻みつ、密かに想いを寄せた光悦の娘いく、そして初恋の相手だった出雲の阿国という、3人の女性が醍醐寺で集い、遺作とされる「風神雷神図」について想いを馳せる場面までが、一巻の絵巻物のように思える、煌びやかな作品でした。

2018/9