りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

震える山(C・J・ボックス)

イメージ 1

ワイオミングの心優しい猟区管理官ジョー・ピケットが、自殺した先輩の後釜として花形地区のジャクソンへと単身で赴任することになりました。この表紙を見てください。グランド・ティトンです。映画「シェーン」の舞台です。ティトンとイエローストーンをドライブ旅行した時のことを思い出しました。

ところが、アメリカ有数の国立公園の入り口であり、観光客も野生動物も狩猟者も多く、世間の注目を集めているこの地域は「ワイオミングのカリフォルニア」と呼ばれるほどの花形地区で、今までのサドルストリングとは大違い。猟区管理官の仕事の困難度も、桁違いに高いんです。オフィスビルに通わなくてはならないし、高慢な保安官は非協力的だし、強引な開発をもくろんでいる建設業者も、自然の中で暮らすアウトフィッターも、動物保護運動家も、猟区管理官と関わってくるのですから。

そもそも尊敬していた先輩が、なぜ自殺するまでに追い込まれてしまったのか。いったい、それは本当に自殺だったのか。一方で、留守宅の家族にも不審な出来事が起こります。アメリカの猟区管理官というのは、日本の自然保護関係の役所とは異なり、取締権限を有する法執行機関です。一般犯罪を捜査する保安官との関係も微妙になりがちでしょうし、開発を認可する権限も有しているので、開発業者とは相性が悪そうです。

ジョーには野心も政治的背景もなく、自分の信念に従って淡々と仕事をこなすのですが、たちまちあちこちと軋轢を起こしてしまいます。猟区管理という仕事が、様々な利害の接点にあるからなのでしょう。いつも不在がちな上に今回は単身赴任ですから、妻のメアリーベスや娘のシェリダンとの関係もまずくなりそう・・。次作ではサドルストリングに戻れるのでしょうか。

2010/6