りぼんの読書ノート

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アンジェリク 緋色の旗(藤本ひとみ)

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フランス革命期をたくましく生き抜く、貧乏貴族の娘アンジェリクの物語。フランス革命がバスチーユ城砦の襲撃から始まったことは有名な史実ですが、アルプスに近い国境の街・グルノーブルでも、城砦が暴徒に襲われました。美貌の青年貴族との結婚を控えていた城砦司令官の娘・アンジェリクの運命は一変します。

父親は城砦を守って命を落とし、婚約者は行方不明。パリの寄宿学校に通う従弟のもとに身を寄せるべくパリを目指すアンジェリクでしたが、なんと彼女に同行するのは、凶悪犯として投獄されていた少年。苦難の末にたどり着いたパリでは、従弟と出会えず、家も仕事もないままに犯罪者の仲間に身を落とすアンジェリク

著者が描きたかったのは革命期の庶民の生活なのでしょう。婚約者であった青年貴族はパリに姿を現わし、王政復古を目論む王党派として陰謀を企み、パリの学生であった従弟は、ロベスピエールやダントンに憧れて記者活動を行いますが、毎日の生活の安定と平穏を願う庶民は、どう生きたらよいのか・・。

どうも、最近の藤本さんの作品には迷いが感じられるようです。フランス・ナポレオン史研究学会の日本人初の会員で、フランス政府観光局親善大使を務め、フランス観光開発機構の名誉委員も務めるほど、フランス史に造詣の深い藤本さんですが、読者のターゲットを定められずにいるように思えてしまいます。マダムの幻影や『聖戦ヴェルデ』は素晴らしい作品だったのですが・・。

2010/6