りぼんの読書ノート

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三世相~並木拍子郎種取帳(松井今朝子)

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大阪から江戸に移ってきた歌舞伎・狂言作家の並木五瓶に師事し、師匠のために市井の事件からネタを拾ってくる役割の青年・拍子郎を狂言回しとする人情もの。一の富二枚目に続く、シリーズ第3弾です。3作とも5編の連作短編というのは、「五瓶」の「五」を意識しているから? すると、このシリーズは第5作まで続くのでしょうか。

前作で五瓶の浮気が発覚したため、妻の小でんとの溝が生まれてしまいましたが、夫婦仲は急には戻らないようです。時間をかけるしかありませんね。一方で拍子郎には、同心を勤める兄の養子となって跡を取る話が起きてきます。料理屋の娘おあさとの仲はどうなってしまうのでしょう。

「短い春」奥御殿の女中が宿下がりの際に役者と逢引? 拍子朗はアリバイ作りのために食事に同席を求められたのでしょうか。でも2度めの逢引は何のため?

「雨の鼓」大店の番頭が大阪から連れて来た妾が殺害されます。折りしも近所にやはり大阪から越してきていた鼓打ちが疑われるのですが・・。

「子ども屋の女」艶事に縁のなさそうな老商人が通い詰める相手は、浮気相手の辰巳芸者なのでしょうか、それとも・・。拍子郎の早合点がトラブルを生みます。「子ども屋」とは芸者置屋ですが、若い娘が切り盛りすることもあったんですね。

「三世相」名医の殺害犯は意外な人物でしたが、占者は所詮、相手の内なるものを取り出すものにすぎません。干支と易占と因縁に俗説を加えて、前世・現世・来世を占うのが三世相ですが、「父親が近くで生きている」と占われた拍子郎は、年の離れた兄が父親ではないかと疑念を抱きます。

「旅芝居」若手役者の旅回りは修業を兼ねています。地方興行主との間を取り持つのが仲立ちですが、支払いを巡るトラブルも多かったようです。佐原興業の事前確認のついでに、勘当された商家の息子を銚子で探す拍子郎でしたが、今回は完全に脇役にまわってしまいました。でも、すぐに自分の人生で主役を張らなくてはならないことは自覚しています。おあさをどうするのか。兄の後継ぎをどうするのか・・。

2010/6