りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

花のあと(藤沢周平)

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1985年に出版された短編集ですから、作家として油が乗り切っていた頃の作品ですね。8編が収録されていますが、『隠し剣シリーズ』『用心棒シリーズ』のように統一されたテーマがあるわけではなさそうです。

「鬼ごっこ 身請けして囲っていた若い女を盗賊に殺された 今は堅気の元盗人の復讐劇。『鬼平犯科帳』の秀作を読んでいるようです。

「雪間草」 婚約者に嫁ぐ寸前、殿様の側室にされて、後に出家した松仙尼。20年後、昔の婚約者を窮地から救い出すべく、殿様を締め上げて「お咎めなし」と約束させるのです。決め台詞は、「人並みの女の幸せを奪って、さんざんな仕打ちをなされた上に・・」。

「寒い灯」 姑にいびられ、優柔不断でマザコンの夫のもとを飛び出したおせんは、病気になった姑の看病を頼まれる。虫のいい頼みなのですが、実は彼女、女衒に騙される寸前でした。やっぱり、多少の苦労があっても、人並みの生活がいいってことでしょうか。

「疑惑」 押し込み強盗の末に主人を殺害したのは、勘当された不良の元養子だったのでしょうか? この作品には、人並みの生活に満足できなかった女が登場します。

「旅の誘い」 北斎の富士に臭みを感じた広重は、自分の風景画の趣を見抜いた版元の依頼で東海道を描いて大ヒットとなるのですが、その過程で自分の心の中の空虚を知ってしまいます。そういえば、版元も何かを失って、金の亡者になってしまったような・・。

「冬の日」 10年ぶりに再会した幼馴染の男女。2人は互いに、10年の間に不幸な過去を背負ってしまったのですが・・。

「悪癖」 完璧な帳簿から不正を見つけ出した勘定方の男には悪い癖がありました。あれっ、こんな癖を持った「隠し剣の使い手」がいたような? 記憶違いかな?

花のあと 孫に昔語りをする祖母。彼女はかつて凄腕の剣士だったのです。お婆様には、結婚前にあこがれていた藩一番の使い手の男が卑劣な罠に嵌って切腹させられたと聞いて、仇討ちに乗り出したという過去があったのですね。北川景子主演で映画化されました。

2010/5