りぼんの読書ノート

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縁切寺お助け帖(2)姉弟ふたり(田牧大和)

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縁切寺として有名な北鎌倉の東慶寺を舞台とする、シリーズ第2作です。水戸家の姫君から院代に転じた法秀尼。姫君の侍女としてついてきた人情の機微に敏い桂泉尼。元駆け込み女で理詰めの論法に強い秋山尼。かつては反東慶寺勢力から送り込まれた刺客であった警護役の女剣士・茜らが、前作に続いて世間の因習や陰謀に立ち向かいます。 

 

第1話では、夫ではなく息子から逃げてきた女性が駆け込んできます。しかも嫁までもが姑に続いて駆け込んできたのには、どのような理由があったのでしょう。複雑にもつれた家族関係を解きほぐしたのは、秋山尼の説教でした。 

 

第2話では、意に染まない相手に妾に出された娘が、姉思いの弟に連れられて駆け込んできます。その相手が東慶寺を統べる寺社奉行であることに加え、弟も追手も茜と同じような闇の太刀筋の使い手であるは何故なのでしょう。茜の建策を信じ切った法秀尼の過去が、小出しで明らかにされます。 

 

第3話では、悪辣な寺社奉行に家族を人質を取られた元遊女が、偽りの駆け込みを行います。水戸藩の裏切り者と手を組んだ寺社奉行によって、東慶寺に危機が迫る中での、法秀尼の肝の据え方が見事です。この語の過程で、東慶寺飛脚の梅次郎がかつては、吉原で逃亡遊女を捕えることに悩んでいた男衆であったことが明らかにされます。 

 

この著者には、魅力的な主人公を優れた構想のもとで活躍させる作品が多いのですが、その多くが短いシリーズで終わってしまうことだけが不満でした。このシリーズは長く続けて欲しいものです。 

 

2020/9