縁切りを求める女たちから聞き取り調査をする役目を持っているのが、東慶寺の門前にある3軒の御用屋。その一軒である柏屋に居候している戯作者志望の医者見習い・新次郎が見聞きした、駆け込み女たちのエピソードが、季節の花々とともに語られていきます。
離縁の際に置いていく持参金を夫の商売に役立ててもらおうと偽装離婚を企てるおゆう。病気と偽って離縁を迫るおぎん。偽の再婚話を持ち込まれた鉄練り職人のおきん。花魁の妹と入れ替わって足抜けを果たさせようとするおみつ。絵師の夫の活写を嫌がったおせつ。夫の浮気相手との再婚を封じようとするおけい。
夫を守銭奴の姑から親離れさせようとするおこう。親孝行すぎる夫に疲れたおはま。女形どうしの関係を持ち込んだ菊次。不離縁証文を無効にするために架空の不義をでっちあげられた珠江。縁切り期間内に想像妊娠してしまったおゆき。寿司飯炊きの武道家の夫をやり込める男勝りのおゆう。皆それぞれに、特別の事情があるのです。
映画化されたのは、おゆう、おぎん、おきん(じょご)のエピソードです。人情と金銭と意外性がたっぷり盛り込まれた、見ごたえある作品でした。もっとも、江戸時代を通じて3000人いたという駆け込み女の大半は、標準的なケースだったのでしょう。
2019/1