りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

つくも神さん、お茶ください(畠中恵)

イメージ 1

しゃばけシリーズ』の著者によるエッセイです。畠中さんは、短大のビジュアルデザインコースを卒業された後、漫画家のアシスタントやイラストレーターの仕事をしながら、都築道夫さんが主催する「創作講座」で7年間学び、ついに、日本ファンタジーノベル大賞受賞作のしゃばけを書かれたんですね。デビュー後の活躍ぶりは、皆様も知るとおり。

このエッセイでは、自らを「戯作者」と呼び、日常生活を古風な語り口で綴っていますが、著作のイメージ通りですね。「本を読む」ことが、「作家が建てた家を訪問すること」という畠中さんに同感です。まずは訪問してもらえないと、読者に届きませんものね。本人の読書や映画の趣味、亡き師匠の思い出、中国に爆食旅行に出かけた珍道中談など、多岐にわたる内容でしたが、なんといっても興味深いのは、『しゃばけシリーズ』に登場する妖たちに関する話です。

妖たちのネタは江戸時代に出版された4冊の図録を纏めた『鳥山石燕 画図百鬼夜行』に求めたようです。そこに登場する妖怪たちの中から「恐怖から遠いユーモラスな妖怪」をピックアップされたとのこと。たしかに、鳴家も屏風のぞきも鈴彦姫も、イタズラはしても、人間に危害を加えることはなさそうです。

また、妖怪にも地方色があって、江戸では登場させられない妖怪も多いとのこと。「氷柱女房」なんて雪国にしかいないでしょうし、沖縄の「ウァーグァーマジムン」なる豚の妖怪も、お江戸に登場させるのは難しそう。これって、池上永一さんの風車祭に登場する「三本足のギーギー」の仲間かしら?

2010/5読了