りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

コララインとボタンの魔女(ニール・ゲイマン)

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話題の3Dアニメ映画の原作は、ニール・ゲイマンさんが書いていたんですね。大きな古い家に引っ越してきたものの、忙しい両親に構ってもらえないコララインが、どこにも通じていないはずのドアを開くと、ボタンの目をした「もうひとりのママ」に出会います。「だれにでもみんな、もうひとりのママがいるのよ」と話しかけてきて、「どんな願いも叶えてあげる」と誘いかけてきます。しかし、それを振り切って部屋に戻ると、本物の両親はあとかたもなく消えていました。不思議な石を持って、名なしの黒ネコとともにさらわれた両親を助け出すために、たったひとりでもう一度、ドアを開くコララインでしたが・・。

自分のワガママを聴いてくれない両親をうっとうしく思ったことは、誰にでもありますよね。でも「それこそが本当の愛情」と気づくまでのイニシエーション・ドラマは、どの時代でもどこの国でも共通のようです。昔からのテーマの焼き直しですが、ダークで現代風になっているのがゲイマンさんのオリジナリティでしょうか。でも、映像を見ずに比較してはいけないのでしょうが、「千と千尋の物語」には及びません。

せっかくのゲイマンさんの作品なら、「魔女を生み出したのは子どものワガママな心」として最後にコララインが自分の心と向き合うようなヒネリがあっても良かったのでは? 自作のアメリカン・ゴッズやエンデの『果てしなき物語』のように。

2010/5