りぼんの読書ノート

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偶然仕掛け人(ヨアブ・ブルーム)

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イスラエル発のファンタジーですが、ふわふわした物語ではありません。本書を絶賛したというジョナサンキャロルや、ニールゲイマンを思わせる作品です。 

 

「偶然仕掛け人」とは、指令に基づき、偶然の出来事が自然に引き起こされるよう暗躍する秘密の存在のこと。男女の出会いもちろん、伝説の上級者となるとペニシリンや電磁場の発見を仕組んだり、ノルマンディー上陸作戦を成功させたりもするのです。 

 

新米の偶然仕掛け人ガイの前職は少年少女の空想上の友人になりきる「イマジナリーフレンド」。彼は、この時に出会ったカッサンドラという同僚のことを忘れられずにいるのです。同僚エリックの前職は「点火者」ですが、読者はこの言葉の意味は最後になって知らされます。他にも「夢織り人」や「幸運配達人」など、この世界を裏から支える工作員が多数存在しているという設定 

 

もうひとりの同僚エミリーはガイに思いを寄せていて、ガイに対して自分を好きになるような「偶然」を仕掛けるのですが、もちろんこれはルール違反。しかも最後の瞬間にガイに仕掛けを気づかれてしまい、失意のままに去っていくのですが、それはある意味で「死」でもあったのです。 

 

この種の作品にネタバレは厳禁ですね。「天使」とでもつぶやいておきましょうか。 

 

2020/4