りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

お行儀の悪い神々(マリー・フィリップス)

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ベックさんが紹介してくれた、とっても楽しい本でした。かつてギリシャで栄華を誇ったオリュンポスの神々が、現代のロンドンで困窮に喘えぎつつ細々と生活しているというのですから。

アポロンはいんちき霊能者として、アルテミスはドッグ・シッターとして、アプロディテはテレフォン・セックスのオペレーターとして、ディオニュソスはナイトクラブ経営者として、ヘルメスはバイク便の配達者として・・。ゼウスに至ってはボケ老人状態です。神々は神通力を失いつつあり、将来の希望は失われようとしています。

そんなある日、アポロンの仕打ちに怒ったアフロディテが息子のエロスに命じて「恋の矢」を放ちます。「少々小太りで30代の人間の女性」のアリスに恋してしまったアポロンでしたが、「今後10年、人間に危害を加えない」と誓ったばかりの身としては強引に迫ることもできず、「恋しさ余って憎さ百倍」状態に陥ってしまい、あろうことかゼウスを騙してアリスを殺させてしまいます。

これに端を発して、世界が滅亡の危機に瀕してしまう大事件が起こってしまうのです。アルテミスは、アリスを愛していたオタク系のニールを「にわか勇者」に仕立てあげて、アリスを連れ戻して世界を救うべく、黄泉の国に乗り込むのですが・・。

ギリシャの神々は「キャラの宝庫」ですね。そのキャラが「正しい境遇」からズレてしまうと、こんな状態になってしまうのです。キリスト教徒となってしまったエロスや、神々の力を蘇らせる方法を理解していながらもうまく伝えられないアテナや、冥王ハーディスに連れされられた黄泉の国を住みやすく改造して贅沢三昧の暮らしをおくるペルセポネが、ツボに来ました。

ちょっと惜しかったのは、神々が力を失った理由です。ニール・ゲイマンアメリカン・ゴッズと似ていましたので・・。もっとも、どちらが先にこのアイデアを使ったのかは知らないのですけど。

2010/5