前巻『太陽の転落』で、死から蘇った3人の邪悪なローマ皇帝のひとりネロとニューヨークで戦ったアポロンは、インディアナポリスに到着。アポロンには、ガイアの息子である大蛇ピュトンに奪われた「デルポイの神託所」を奪い返すという任務が与えられていたのですが、その前に他の4カ所の神託所を開放する必要があり、そのひとつ「トロポニオス」がここにあるというのです。
他の冒険譚と同様、アポロンもひとりではありません。前シリーズ『オリンポスの神々と7人の英雄』にも登場したヘパイストスの息子リオと、彼によって流刑地オギュギア島から救い出されたカリュプソが同行。ニューヨークの路地裏でアポロンを助けた12歳の少女メグはデメテルの娘なのですが、ネロを養父としている微妙な立場にあって、現在は行方不明。本巻ではインディアナポリスのシェルターを運営しているエミーとジョゼフィンも仲間に加わりますが、エミーは神話時代にアポロンと関わりがあった女性だったのです。
彼らがこの街で出会った敵は、やはりローマ時代にアポロンと因縁があったコモドゥス。哲人皇帝マルクス・アウレリアスの息子であり、映画「グラディエイター」の悪役といったほうがわかりやすいかもしれません。圧倒的な兵力で押し寄せる敵軍に、シェルターは陥落寸前に追い込まれるのですが・・。
このシリーズのテーマは、人間に落とされたアポロンが、神であった頃の傍若無人な振る舞いに反省しながら、死を免れない存在である人間の生き方の尊さに気づいていくことなのでしょう。もちろん波乱万丈のストーリーも楽しい作品です。カリフォルニアに舞台を移す次巻で登場するであろう、もうひとりの邪悪な皇帝が誰なのかも気になります。
2019/1