りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

太閤暗殺(岡田秀文)

イメージ 1

茶々が秀頼を産んだ後、秀吉の甥として関白を継いでいた秀次の存在はうとまれ、やがて一族郎党もろとも処刑されるに至ったことは有名な史実ですが、その裏には何があったのか。「歴史ミステリ」ですね。秀次の危機を感じとった側近・木村常陸介は、大盗賊の石川五右衛門に秀吉暗殺を依頼し、京都所司代前田玄以と、石田三成がそれを迎え撃つという物語ですが、これがうまくできています。

超人的な身体能力と数々の術策を弄して秀吉を狙う五右衛門に対して、警察権力を利用して執拗に五右衛門を追う前田玄以が探偵役。そこに、なぜか余裕を見せている石田三成と、異常性格者の秀次への忠誠心と保身の間で揺れ動く木村常陸介が絡む「裏の描き合い」がスピーディで面白いのです。

しかも、最後の最後に明らかになる「真実」が意表を衝いてくれます。ネタバレになりますので詳しくは書きませんが、「太閤秀吉」という誰もが知っているキャラクターがあって、はじめて成立するミステリなんですね。信長の棺三部作の加藤廣さんといい、書きつくされたと思える戦国時代ものも、史実の裏を深読みすることによって、ミステリが成立することを示してくれています。

2009/12