りぼんの読書ノート

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『婦人公論』にみる昭和文芸史(森まゆみ)

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普段手にすることはないのですが、中央公論社から大正5年(1916年)に発行された『婦人公論』は、それぞれの時代において女性の様々な生き方を提示してきただけでなく、文芸欄も華やかで、ここから数多くの名作も生まれていたとのこと。

2006年に創刊90周年を迎えた企画として、ジャーナリストの著者が『婦人公論』に連載された作家と作品をピックアップして紹介したものが本書です。作家論としても、ブックガイドとしても楽しめる一冊。

激動の戦前編-負けられません勝つまでは
谷崎潤一郎 細雪4姉妹のモデルは妻と姉妹たち。戦争の雰囲気を感じさせない物語
林芙美子 「北岸部隊」従軍記者への志願は一族に頼られて煮詰まった生活からの脱出
佐田稲子 「くれない」職業婦人と家庭は両立できるか?女性のつらさ満載の自伝的小説
村松梢風 男装の麗人東洋のマタ・ハリ川島芳子の死刑判決の証拠にされた?

堀辰雄 「大和路・信濃路」結核に苦しんだ作家の、生と死をみつめた紀行文
片山廣子 「芥川さんの回想」芥川龍之介プラトニック・ラブを捧げられた聡明な女性
太宰治 「十二月八日」大変大変と言いながら時流に流されていく、開戦の日の主婦の日記
野上弥生子 「旅雁日記」あくまでも自分の物差しで欧米文化を評価した骨太の旅行記
宮本百合子 「午市」23歳の新進女流作家が、吉原を通じて社会の矛盾を直視

崩壊と出発の戦後編-わが人生に悔いなし
平林たい子 「小説 岡本かの子天才型のかの子への憧憬を見事に描き切った名作
木下順二 「夕鶴」この名作がはじめは社会性に欠けると言われたとは?
伊藤整 「女性に関する十二章」今読むと女性蔑視っぽいけど、当時はベストセラー

幸田文 「草の花」女学校時代を綴った自伝。断片的な文章からも芳醇な香りが漂います
亀井勝一郎 「美人論」美貌というのは愛情の数だけある・・納得します^^
室生犀星 「わが愛する詩人の伝記」白秋、光太郎、朔太郎・・日本の抒情詩の系譜
宇野千代 「自伝的恋愛論恋多き美女の前向きで楽天的な恋愛論

高度成長をゆく戦後編-誰がためにペンはある
石川達三 「稚くて愛を知らず」花村友紀子みたいな女性は現代に増殖してる?
川端康成 「美しさと哀しみと」大作家に犯された女流画家の弟子の復讐劇はスリリング
三島由紀夫 「音楽」近親相姦、結婚憎悪、女性蔑視、貴女願望のオンパレード

井上靖 楊貴妃伝」稀代の美女が巻き込まれた、権力抗争と反乱の歴史絵巻
水上勉 「くるま椅子の歌」障害を持つわが子への応援歌。先駆的な福祉小説
松本清張 「霧の旗」無実の兄を見殺しにした弁護士への復讐をする桐子。
有吉佐和子 出雲の阿国気合いの入った大河小説。著者得意の芸術論もたっぷり

作家論としても、ブックガイドとしても楽しめました。でも、ここにあげられている本のうちで既読はたった6冊。まだまだです。^^;

2009/12