りぼんの読書ノート

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新しい資本主義(原丈人)

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シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストが、日本を舞台に未来を語ります。市場を万能の神と崇め、株主至上主義を歌い上げたアメリカ発の金融資本主義がすでに欠陥を露呈していることは誰もが認めているでしょうが、ではその後に続くべきものは何なのか。その具体的な見通しを大胆に打ち出した本は、まだ数少ないですね。

著者の基本的な主張は、「公益資本主義」という言葉に象徴されます。キャッシュフローの極大化を価値とするパラダイムから、世の中への貢献こそが価値との考え方に大きくシフトをするべきだというのです。そのための施策は次の5項目。

ストックオプションは即刻禁止せよ
・エネルギーと食糧は自由競争だけに任せるな
・5年以上株式を保有する人だけの市場をつくれ
・投資減税で新技術開発への資金を促せ
・コンピュータに代わる新たなテクノロジーを生み出せ

最後の項目がちょっとピンと来ませんね。著者は「過去において常に剰余価値は大きな技術革新によってもたらされた」としており、直近の技術革新はアメリカでいわゆる「IT通信革命」が起きた90年代だったとしています。しかしすでにそれは斜陽化しており、次の技術革新が待ち望まれると言っているのです。

そこまでは理解得きるのですが、具体論になると難しい。これからの社会を変革していくより軽装なパーソナル端末にふさわしい技術ではないかと言っているようですが、このあたりはよくわかりません。「日本こそが新しい資本主義の担い手となれる」との主張は、耳に心地よく聞こえますが、「いち早く環境を整えれば」との前提つきですね。アメリカ発金融資本主義に毒されきってはいない「実業立国」のシステムが残されているというだけでは、まだスタートラインに立っただけ。結局は具体論が勝負どころです。

2009/7 帰国便にて