りぼんの読書ノート

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リンカーンの夢(コニー・ウィリス)

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南北戦争時代の歴史小説を専門に書いている作家の調査助手をつとめているジェフは、友人の精神科医の紹介で、アニーという女性と出会うのですが、彼女は奇妙な夢に悩まされていました。南軍が敗色濃くなった、南北戦争の光景を夢に見るのです。

ジェフは次の作品のために、リンカーンが見たと伝えられている夢について時代考証やその意味を調査しているところなのですが、アニーの見る夢が歴史的事実に即したものであり、歴史家からも忘れられているほどの細部に渡って克明であることに気づきます。しかもそれは、名馬トラヴェラーを駆って戦場を疾駆する、南軍の名将軍リーの立場から見たもののようなのです。

果たしてアニーの夢は、リンカーンの夢なのか。リーの夢なのか。過去の人物から送られてくるかのような夢は、彼女に何を伝えたがっているのか。ジェフがつきとめた真相は、哀しいものだったのですが・・。

巻末のインタビューで、著者は「夢そのものに関する物語はまだまだ書ける」と語っています。厳密には「夢」ではありませんが、この作品のテーマは間違いなく、後年の名作航路に結びついていますね。SF的なテーマは別にしても、南北戦争の実態を伝える本としても楽しめました。

2009/7