りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

八朔の雪(高田郁)

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著者と同姓同名の知人がいますので、「まさか」とは思いましたが、もちろん別人。^^;

幼い頃に両親を失った際に、大阪の名料理屋夫婦に救われた少女・澪(みお)でしたが、今度はその奉公先も火事で失い、今は、母のように慕うおかみさんと2人で江戸の長屋で暮らしています。

江戸での奉公先である蕎麦屋の主人に気に入られ、調理場にも立たせて貰えるのですが、澪の作る上方料理は、江戸の人々にはなかなか受け入れてもらえません。やがて、蕎麦屋の主人・種市が腰を痛めて、蕎麦打ちができなくなったのをきっかけに調理場を任された澪は、大阪と江戸の味を融合させた料理を作り上げようと、研鑽を重ねるのですが・・。

とってもよくできた小説です。主人公の澪はもちろん、彼女を取り巻く人たちも魅力的で、しかも物語がどんどん先に進んでいくので、NHKの土曜時代劇あたりにぴったり。料理屋をときどき訪れて澪の料理を評価する謎の浪人(実は偉い武士なのかも?)とか、ふとしたことから澪と出会い、店の常連となる若き医師(恋愛に発展するのか?)とか、毎回ちょっとずつ登場して重要な役割を果たす脇役がいるのも、連続ドラマ向きですね。

澪の料理の腕を妬んで大人気なくつぶしにかかる江戸の名料理屋「登龍楼」とか、幼馴染の美少女の意外な運命とか、物語的にも続編が期待されます。巻末の「澪の料理帖」で、作中のお料理レシピがついているのも楽しい趣向でした。

2009/7