かつて、萩原健一、山口智子、室井滋といったメンバーで映画化されました。妻・しづ子の死の直前に「新しい女房はもらわない」と約束した居酒屋の主人の壮太郎ですが、周囲からの世話もあって、後妻を迎えてしまいます。もちろん、そんな約束は忘れて・・。
ところが、出たのです。しづ子の幽霊が! 幽霊を見えるのは関係者である壮太郎と、後妻の里子だけ。でもこの幽霊、壮太郎に恨みがあるわけではないらしい。約束を破られたのはしゃくだけど、そんなことはもう気にしていない。ただ、何となく成仏できないようであの世に行けないから、ここに居るだけ。
それでも2人にとっては気持ち悪くて仕方ない。お寺で供養してもらっても、しづ子が嫌いだった犬を飼っても、消えません。そんなうちに、里子の気持ちに変化が現れます。なんと、幽霊のしづ子を姉のように思えてきて、仲良くなっちゃうんですね。不思議な三角関係は、いったいどうなってしまうのでしょう・・。
しづ子さん、『応為担担録』のお栄と似た雰囲気ですね。世間離れしたお栄から、北斎が生きていたうちはまだ少々残っていた執着やこだわりを全部捨て去ると、こういうキャラになるように思えます。そして、そんなキャラを表わすのに、幽霊という設定がぴったりなんです。
やっぱりこの作品も「担担」とした雰囲気です。「幽霊噺」ではなく「人情噺」ですね。
2009/2