りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

眺望絶佳(中島京子)

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東京スカイツリーからの「往信」と東京タワーからの「復信」の間に挟まれた物語は、東京のそこかしこで起きた数々の人間模様でした。

「アフリカハゲコウの唄」会社サイトに相談を持ちかけてくる客に共感メールを送る仕事を担当した女性社員が、健康相談にのめりこみすぎて、約束を保護にした女性に傷害事件を起こしてしまいます。

「倉庫の男」小さな出版社社長の女性の初恋の相手は、倉庫で自分だけの本を作ってクビになった男でした。今は夫から閉鎖を勧められているほど古い倉庫での古い思い出。

「よろず化けます」老女から死んだ夫に化けてほしいと依頼された、たぬきの兄弟の正体がバレそうになるのですが・・。

「亀のギデアと土偶のふとっちょくん」クラスでずっとカメ当番をしていた少年が転校記念にカメを欲しがるのですが、母親は許してくれそうにありません。そんな時、父親がゆるキャラをデザインした町が津波に飲まれる映像がTVから流れます。

「今日はなんだか特別な日」ふと入ったビルジングのギャラリーでは、一日だけの展示会が行われていました。その日は「願いが叶う日」だったのです。

「金粉」薔薇屋敷に住む認知症の老姉妹は、かつて「薔薇が枯れるときはわたしたちの健康が脅かされる時」と言っていました。老姉妹を気にかけて訪れた民生委員は、お茶に埃が入っていると思って手を出さなかったのですが・・。

「おさななじみ」中年になった玲の初恋が、今叶おうとしています。海外NGOから35年ぶりに帰国した男からプロポーズされたのです。玲の過去は意外でしたね。^^;

「キッズのための英会話教室英語教室の女性講師が無責任な母に置き去りにされた男の子を預かって世話をしているうちに、自分の子どものように思えてきます。

中島ワールド全開ですが、もっとパンチの効いた作品を読みたいですね。それぞれの物語に、東京タワーやスカイツリーとの関係を感じられなかったのも残念。

2012/3