りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

私の話(鷺沢萠)

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鷺沢さんが、3つの時期を描いた自伝的小説です。表紙にある、家族の集合写真がいいですね。

1992年。22歳。母親の大病と自らの離婚という逆境の中で、幼い頃からの生活を振り返ることで立ち直ろうともがく自分自身の姿が客観的に描かれます。

1997年。27歳。賭け麻雀に明け暮れるグズグズの生活の中で思い出した、父が得意にしていた料理。おそらく祖母から伝わったのであろうチヂミに似た料理が、貧しい生活の中で子どもを飢えさせないための料理だったことに気づきます。いや、それで感動して立ち直ろうって訳じゃないんですけどね。

2002年。32歳。日本語の読み書きを学ぶことができなかった在日韓国人1世世代を対象にした識字学級を手伝うことになり、ハルモニたちと交流する中で、この頃亡くなった祖母への愛情が語られます。

どの物語も、テーマは「家族」と「出自」。彼女にとって、この2つは重なり合ったテーマです。テーマは深刻だけど、読後感はなぜか暗くはありません。鷺沢さんの文章は、自分の気持ちを素直に出しているように思えるからなのでしょう。多少、偽悪的なところもありますけどね。

2008/12