りぼんの読書ノート

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雲南の妻(村田喜代子)

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ピンクレディが日本で流行っていたというから、30年近く前の時代のことでしょうか。中国雲南の奥深い地で少数民族から希少な茶葉の買い付けをする商社駐在員の妻が、通訳に雇った少数民族の若く美しく聡明な女性から、「女同士の結婚」を提案されます。

既に夫がいる身だし、数年後には日本に帰るはずだし、そもそも同性愛者でもないし、何のことか理解できないでいたのですが、その地方には古来から「同性婚」の風習があったんですね。主人公は、少数民族から珍しい茶葉を手に入れるためには「身内」である必要があり、「形式だけ」と結婚に踏み切ります。

「夜はどっちと寝るんだ?」と夫に訊かれ、3日交代とします。彼女たちはレズビアンではないのだから、何も同衾する必要はないと思うのですが・・。不思議な夢のような生活は、主人公が肝炎にかかって帰国するに至って終わりを告げます。

この物語を幻想的にしている背景には、奥深い中国茶の世界があります。小さな急須と小さな茶器を使って、水遊びのようにジャブジャブとたっぷりのお湯をかけて、摘んでから何十年も発酵させた古茶を蘇らせて、香りを楽しむ。奇妙な「同性婚」の物語も、「お茶に酔う」ならアリかとも思えてきます。

中国奥地には、古くから結婚を嫌う風習があったとのことです。「通い婚」は理解できますが、結婚しなきゃ種が途絶えてしまうと思うのですが・・。「男系社会」の「同居婚」の強制を嫌がる気持ちが、「結婚」という形態を忌避させるに至ったのかもしれませんね。結婚と出産は別のものと割り切れたでしょうし。今の日本でも「家事が好きでたまらない」妻を欲しい女性も多いかも。^^;

2008/12