りぼんの読書ノート

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修道士カドフェル2 死体が多すぎる(エリス・ピーターズ)

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12世紀イギリスの地方都市、ウェールズ国境にも近いシュルーズベリを舞台にした歴史ミステリ「修道士カドフェルシリーズ」の2作目です。

第1作ではよくわからなかった時代背景が、この作品ではっきりとしてきます。ヘンリー2世によるプランタジネット朝成立前夜、前国王の甥スティーブンと前国王の娘モードがイングランド王位の座を争って無政府時代とも呼ばれた時代だったのですね。

女帝モードを指示していたシュルーズベリは攻勢に出たスティーブン王の軍勢によって陥落し、94名の捕虜が全員処刑されます。ところが埋葬をかってでた修道士カドフェルが見たのは、1名多い95名の遺体だったのです。死体が多すぎる!

戦闘と処刑に紛れて殺人が行なわれたのかもしれないと、カドフェルは捜査に乗り出すのですが、問題の死体は、戦いに敗れて逃亡した城主の財宝を運び出す役目についていた従者と判明。そんな中、町を脱出しそびれた城主の忠臣の娘ゴディスが、修道院に匿って欲しいと男装して登場。

戦いの勝者であるスティーブン王は、今後の内戦を有利に進めていくための財源となる財宝も、人質として使える娘も欲しているのですが、それらを手に入れて王に取り入ろうとする青年策士ベリンガーも登場。カドフェルは、犯罪を暴いて、主の御心を行なえるのでしょうか・・。

第1作では人々の信仰心の篤さが事態を好転させましたが、本書では名誉を重んじる中世騎士道が問題の解決に結びついていきます。カドフェルをして「生まれながらの陰謀者」と呼ばしめた、策士ベリンガーとの虚々実々の駆け引きも見せ場です。まだ2冊しか読んでいませんが、この作品はなかなかいい出来なのではないでしょうか。

2008/11