りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

まだ人間じゃない(フィリップ・K・ディック)

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ディックの短編集ですが、先に読んだゴールデン・マンと合わせて一冊だったそうです。どの作品も、豊かで常人の意表を衝く発想で満ち満ちていて、ディックが「最も映画化されたSF作家」だということが実感できること間違いなし!

「フヌールとの戦い」:人現そっくりに変身し、恐るべき工学兵器を用いて地球侵略をもくろむ異星人フヌールでしたが、彼らには大きな欠陥がありました。全員が、身長が60センチで同じ人物に変身してるんですね。すぐにばれちゃう・・^^;。

「最後の支配者」:大半の人類はアナーキストとなり、世界中の政府が崩壊した未来。中世的な生活を営む人類でしたが、ロッキー山脈の奥深くに、人類が到達した科学技術の水準を維持している集団がありました。その指導者は、今はもう生産されることのないロボットの最後の1台だったのですが、アナーキストたちが襲い掛かってきます。

「干渉する者」:タイムマシンが発明された時代。人類が見た未来は、知性を持った蝶に支配される世界。未来を恐れた人類は、パラドックスの禁を破って有人タイムマシンを送り込むのですが・・。

「運のないゲーム」:辺境の星を巡業するサーカス団が、地球からの植民者たちに念動力の勝負を挑みます。その年の収穫をかけた勝負で植民者たちが勝ち取った景品の正体は恐るべきものでした。旅回りのサーカス団の正体が、外宇宙からの侵略者だとは思いませんよね~。

「CM地獄」:惑星間の通勤路線は、強引に割り込んでくるCM地獄状態。ついに、自分自身を押し売りするまで引き下がらないロボットまで登場して・・。ディックさん、相当CMはお嫌いのようです。

「かけがえのない人造物」:異星人との戦いに勝利した人類でしたが、その真実は・・。「マトリックス」のアイデアは、すでにディックにあったのですね。

「小さな町」:冴えない中年男性の唯一の趣味は、地下室で町のミニチュア模型を作ること。町民から虐げられた男が、町そっくりに作られた模型を置き換えはじめ、町長室のネームプレートに自分の名前を刻むのですが・・。

「まだ人間じゃない」:12歳までは人間と認められず、「生後堕胎」が法律で認められた社会の恐怖。中絶の権利を主張するウーマン・リブの友人たちから絶交されてしまったそうですが、堕胎や安楽死といった、生と死の境界線を定める問題の難しさを考えさせられる作品です。

2008/10/23読了