りぼんの読書ノート

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密偵ファルコ 3.錆色の女神(リンゼイ・デイビス)

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紀元71年、ネロ後の混乱を制したウェスパシアヌス皇帝の治世も3年目に入ったローマ。これまで皇帝直属の密偵として、ブリタニアの銀鉱山での不正を暴き、ローマ南部での叛乱の兆しを未然に防ぐことに成功したファルコですが、今回は、ローマ市民となった解放奴隷の結婚に絡んだ殺人事件に取り掛かります。

ローマの不動産業界でのしあがりつつあるホルテンシウス3兄弟は、血縁関係にはなく、亡くなった同じ主人に仕えていた解放奴隷たちなのですが、リーダー的なノブスは独身で、あとの2人は既婚。その2人の妻がファルコに依頼したのは、最近ノウスが婚約した赤毛美女セヴィリナの身元調査。このセヴィリナという女性。今まで3回結婚した夫と全て死別しており、その度に遺産を相続してきたという、恐るべき過去の持ち主なんですね。

皆が警戒する中、ノブスは結婚前に毒殺されてしまうのですが、果たしてその犯人は? 一番怪しそうなのはセヴィリナですが、結婚前では遺産は手に入らないわけだし、事業方針を巡って仲たがい寸前だったという2人の妻も相当に怪しい。さらに、ホルテンシウスと組もうとしていた別の悪徳不動産屋もうしろめたいことがありそうなのです。

利害が絡んだドロドロした中で、真の動機は「愛」だったというのが意外な結末なのですが、このシリーズはミステリとしては、あまり出来はよくないのかもしれません。でも、『ローマ人の物語』と較べては塩野さんに申し訳ありませんが、ローマ時代の風俗についてはよく研究されているようで、ローマの喧騒が目の前に浮かんでくるようです。

ファルコを気に入っている、好青年の皇太子ティトスから賜ったヒラメが高価なご馳走だったとか、ガリア出身の奴隷はコックには向いていない(今のフランスなのに!)なんて話は、さすがに『ローマ人の物語』には登場しませんでしたから。^^

ファルコと、元老院議員の娘ヘレナとの身分違いの恋も進展しているようですから、もう少し読んでみようと思います。

2008/10