りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

本所深川ふしぎ草紙(宮部みゆき)

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世情に通じて人情にも厚い岡っ引の親分の「回向院の茂七」を狂言回しとした本書は、以前にNHKでドラマ化されてもいます。個人的な「宮部時代劇」の再読企画の第3弾ですが、この本の物語は結構覚えていました。


片葉の芦
強欲者と言われている近江屋藤兵衛を殺した犯人は、実の娘のお美津だという噂が流れます。幼い頃にお美津から受けた優しさを忘れられず、彼女に思いを抱き続けた職人が探り出した真相は、藤兵衛とお美津の意外な側面でした。「深み」を感じる作品です。

送り提灯
わがままなお嬢さんの「恋愛成就の願掛け」に丑三つ参りを命ぜられた幼い奉公人のおりん。恐々と闇夜に出かけた彼女の送り迎えをしてくれるかのような提灯の正体は?

置いてけ堀
「釣った魚を置いていけ」という声の正体は河童? かわうそ? それとも、浮かばれない死に方をした漁師や魚屋? 魚屋だった夫に横死されたおしずは、遺された息子の角太郎の名前を呼ぶ声を聞くのですが・・。

落ち葉なしの椎
落ち葉がなければ通り魔の足跡を追えたのに・・。暗いうちから通りの落ち葉を掃き清めるお袖には、ある秘密がありました。そして物陰から彼女を見つめる男も・・。

馬鹿囃子
「頭の中であたしを馬鹿にする声が聞こえる。男なんてみんな馬鹿囃子なんだ」。心を病んだお吉の意味不明の言葉が、嫉妬心を抱いたおとしには重くのしかかってきます。

足洗い屋敷
おみよは、若くて美しい義母のお静が好きでした。不幸な生い立ちだった義母は幼い頃に、板橋の宿で客の足を洗い続けたことそうです。そんな情景を悪夢として見ることだって、福に転じてあげたかったのに・・。

消えずの行灯
10年前に行方知れずになった娘を生きていると思い込むおかみさんのためと頼まれて、おゆうは娘になりすまします。人の心の中で消えずに灯り続けるものは何なのでしょう。

2008/9再読