りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゼロの迷宮(ドゥニ・ゲジ)

イメージ 1

パリ大学科学史教授による、アラビアにゼロが伝えられてアラビア数字が完成するまでをめぐる「歴史ロマン」とのことですが、ネタバレなしではレビューにならないほど内容は薄い。以下は、完全にネタバレです。


2003年のバグダッド
イラク戦争のさなか、メソポタミアで遺跡発掘をしていたフランス人女性のアエメールは、数千年前からいくつもの時代に転生を続けて、さまざまな愛に生き、「ゼロの発見」に大きく関わっていた存在でした。(この設定は、かなり微妙^^;)

5000年前のメソポタミア
女祭司アエメールと禁じられた恋に落ちたシュメールの羊飼いタンムジは、表音文字の便利さに感心させられますが、たくさんの羊の数を粘土板に記すことは、まだできませんでした。

4000年前のウル。
女奴隷アエメールに恋してしまった灌漑用水の管理者ウンズは、計算の複雑さに悩んでいます。この時代には、ひとつひとつの数字を表わす記号が無限に必要とされているのです。ローマ数字を思い浮かべるといいかもしれません。

2500前のバビロン。
夢占い師のアエメールは、かつて将来を誓った天文学者ハッタルと再会した際に、線と空欄を用いた数字表記を学びます。桁取りの概念の登場です。

1200年前のバグダット。
踊り子で女泥棒のアエメールは、インドからもたらされた高価な数学書を盗み出し、恋しく思う数学者のモハンドに贈ります。1から9までの図形に加えて、10個目の図形となる「ゼロ」がアラビアにもたらされた瞬間でした。モハメドは十進法を完成させます。

再び2003年のバグダッド
考古学者のアエメールは、ウルク遺跡からアラバスターの花瓶と大理石の仮面を発掘しますが、これこそ5000年前の女祭司が愛の証として贈られたものだったのです。無事を確認された反フセイン民兵ウバイドとも愛を交し合って、よくわかりませんが「めでたしめでたし」のエンディング。歴史はここに完結したのでしょうか?

ここに要約した以外の部分は全て、ハーレクイン的な「愛の物語」です。

2008/9