りぼんの読書ノート

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アマディス・デ・ガウラ 下(ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボ)

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讒言にあってブリテン王リスアルテの宮廷を去り、重い姫オリアナとも別れることになったアマディスは、名前を隠して放浪の旅に出ます。ボヘミアルーマニアコンスタンチノープルで活躍し、各地の王に愛でられ、女王に愛されたりするのですが、ブリテンでは重大な事件が起こっていたのです。 

 

それはオリアナ姫に一目ぼれしたローマ皇帝パティンが、彼女を皇妃に迎えたいと正式な使者を出したこと。既にアマディスとの間にエスランディアンという息子まで儲けていたオリアナ姫ですが、全ては秘密であったため断る理由には使えません。王妃や家臣たちの反対をよそにローマ皇帝の申し出を受けることにしたリスアルテ王によって、オリアナ姫はローマに向けて送り出されますが、折よく戻ってきたアマディスによって救出されます。 

 

しかし面目をつぶされたローマ皇帝とリスアルテ王は、これを放置できません。かくして「ローマ・ブリテン連合軍vsアマディス騎士団」という世界大戦が起こるのでした。一方でアマディスとリスアルテ王の双方に深い恨みを抱く邪悪な魔術師アルカラウスは、アラビア王をはじめとする悪の軍団をまとめ上げて戦場近くに潜ませます。はたして正義の騎士たちの戦いはどうなるのか。悪の軍団に漁夫の利を得させてしまうのか。アマディスとオリアナ姫の愛の行方はどうなるのか。終盤になってめちゃくちゃ盛り上げてくれますが、もちろん「愛と正義は勝つ」のです。 

 

本書はラストに未解決の謎と問題を残して終わりますが、続巻『エスランディアンの武勲』に向けての布石だそうです。父子対決などの見せ場も多いようですが、この種の作品はもうおなか一杯なので、読まなくてもいいかな。 

 

ところで騎士道物語は、形を変えながら現代にまで引き継がれているのです。本書から100年後の『ドン・キホーテ』はパロディですが、「スター・ウォーズ」などの映画や「ドラゴン・クエスト」などのヒロイック・ファンタジーのテーマやストーリーは、騎士道物語の変形ですよね。荒唐無稽な物語ですが、人々の心の琴線に触れる要素を含んでいることは間違いなさそうです。 

 

2020/7