りぼんの読書ノート

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早稲女、女、男(柚木麻子)

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「早稲女」とは、早稲田大学に通う女子学生のことであり、「プライドが高く、負けず嫌い。ガサツな言動が目立つものの、意外と母性的で世話好き。自意識過剰で面倒くさい。芋っぽい。元ガリ勉。酒豪」だそうです。立教出身ながら「早稲女が好き」という著者による本書は、主人公の「早稲女」早乙女香夏子の恋を中心に、彼女を取り巻く他大学の女子学生たちの物語が紡がれていきます。後の伊藤くんA to Eと似たパターンですね。

学校名と校歌(なぜか青山だけはサザンの歌詞)からなる章立ては次の通り。

●「愛の魂正義の心」 立教大学 立石三千子
・そつなく生きる世渡り上手な立教女子にとって、いつも本気度100%の早稲女は面倒くさくてイタイ存在。でも、その反面、あこがれの対象でもあるのです。

●「匂うがごとく新しく」 日本女子大学 本田麻衣子
・王子様を探し放題のアイドル本女生といっても、早稲男と対等に渡り合える早稲女には劣等感を味わうこともあるようです。

●「花は咲き花はうつらふ」 学習院大学 早乙女習子
・コンサバ女子だからこそ、型破りな存在に魅かれてしまうのでしょうか。でも、普通には普通の良さもあるのです。

●「往けかぎりなきこの道を」 慶応義塾大学 慶野亜依子
・予定した未来図から逆算して計画的に生きているステキ女子だって、計算外のことが起きると動転してしまうのです。実は早稲女といいライバル?

●「ひとり身のキャンパス涙のチャペル」 青山学院大学 青島みなみ
・華やかでオシャレな青学女子は、何事にも面倒くさい早稲女と意外と気が合うのかもしれません。

●「仰ぐは同じき理想の光」 早稲田大学 早乙女香夏子
・6年後、他大学の5人の友人たちは、すでに全員結婚しています。憧れだった出版社でバリバリ働きながらも、学生時代の延長のような生活をしている香夏子は空しさに襲われるのですが・・

かなり誇張はされていますが、「あるある」と思えることも多いようです。「学生気質」というものは、今も昔もあまり変わっていないのでしょうか。とはいえ、ひとりひとりの「個人」は、そんなに類型化できるものではありません。それぞれが悩みを抱え、それなりに「イタイ」のも、柚木さんの作品らしい点。

「早稲女」の香夏子はかなり面倒くさいものの好感が持て、他大学の女子学生からも最終的には好かれるキャラ。しかし、彼女が思いきれない「早稲男」の長津田は、典型的なダメキャラなのです。エキセントリックなだけで甲斐性ゼロ、それでいて女性蔑視の雰囲気も漂わせる男のどこに惹かれる要素があるのか、さっぱり理解できませんでした。「伊藤くん」もそうでしたけどね。

2014/12