浅草にあるおもちゃ会社の敏腕プランナー富田宝子、28歳。美人で才能もあり、ヒット商品を次々に飛ばしている彼女の弱点は・・純情すぎることでした。仕事を依頼しているデザイナーの西島に、5年も片思い中。彼女の気持ちを知っている同僚も友人も、やきもきして、応援してくれるのですが、打ち明ける勇気を出せないのです。
ところが、この西島。要するにダメ男。趣味の延長で仕事はそこそこ出きるものの、プロ意識はないし、何より女なら誰でもよく、しかも誰とも長くは付き合えない男。しかも鈍感。そういえば、『早稲女、女、男』も、『伊藤くんA to E』も「いい女を邪険に扱うダメ男の物語」であり、『本屋さんのダイアナ』にもそんな男性が登場します。
ただし本書はかなり「エンタメ寄り」です。次々と災難に見舞われる西島を、スーパーヒロイン級の活躍で密かに助け続けてしまうのですから。しかし、おもちゃプランナーとして必要な特質である自己完結性や頑固さを備えた宝子が、自分の気持ちを表せないまま健気に振る舞い続けるというのは無理があります。やがて彼女は精彩を失っていってしまい・・。
そんな宝子を目覚めさせるきっかけは、何だったのでしょう。ロンドンというのは、ちょっと安易だったかもしれませんね。読者を欲求不満で置き去りにしても、クローズされた遊園地のエピソードで終えたほうが良かったかもしれません。
2015/1