りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

変愛小説集(岸本佐知子編訳)

イメージ 1

「恋愛小説」ではなく「変愛小説」ですので、ご注意ください。確かにだいぶ変わった恋愛がテーマで、タイトルやテーマで引いてしまう人もいるのではないかと心配になってしまいます。(実際に引いた話もありました)

でも編者も言っている通り、設定や対象が「変」であっても、そこに描かれている感情は、多くの場合非常にピュアなんですね。昨今流行している、人生経験の少ない子どもたちによる「純愛ストーリー」とはひと味もふた味も違う、一途な恋愛をお楽しみください。

1.五月(アリ・スミス)
真っ白な花をいっぱいにつけた木に恋してしまった女性(だと思う)の話。そっと見守ってあげたくなります。

2.僕らが天王星に着くころ(レイ・ヴィクサヴィッチ)
皮膚が宇宙服に変質して最後には宇宙に飛んでいってしまう流行病にかかってしまった彼女。どうせなら、二人で一緒に天王星まで飛んでいきたいのに・・。

3.セーター(レイ・ヴィクサヴィッチ)
彼女の手編みのセーターを着ようとする最中に、セーターの中に広がる小宇宙。では、テーブルの下にはどんな世界が広がっているのでしょう。

4.まる呑み(ジュリア・スラヴィン)
愛人を丸呑みしてしまった女性。身体の中から感じるエロティシズムはちょっと迷惑?

5.最後の夜(ジェームズ・ソルター)
病む妻を安楽死させる最後の夜の晩餐に、夫婦が招いた女性は?

6.お母さん攻略法(イアン・フレイジャー
男の子の理想の女性はお母さん? 母親と真剣に付き合うためのマニュアル本。

7.リアル・ドール(A・M・ホームズ)
バービー人形に恋してしまった男性の話はソクッとするほどエロティック。バービーを虐待する妹の存在も不気味。

8.獣(モーリーン・F・マクヒュー)
雨宿りする父娘の前に現れた不思議な獣はどこに行った?

9.ブルー・ヨーデルスコット・スナイダー
飛行船に乗せられてアメリカ大陸を横断する少女を、車で追う少年が行き着いた先は?

10.柿右衛門の器(ニコルソン・ベイカー
本物のボーン・チャイナを作るには、愛する牛の骨が必要。牛は磁器になって永遠の生を得る。では人間はどうしたらいいのでしょう?

11.母たちの島(ジュディ・バドニッツ
戦争になって男たちが出て行き、女たちだけが残された島にやってきた兵士たちが遺したものは? この物語の本当の怖さは、次の世代の行動になって現れてきます。

このメンバーの中では、空中スキップジュディ・バドニッツが普通に思えてしまいます(笑)。でもこの中で一番好きなのは彼女の「母たちの島」。これは「変愛」を超えた物語として読まれるべきなのでしょう。次に好きな作品は「五月」です。

2008/7