りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2008 My Best Books

2008年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。
長編小説部門

神なるオオカミ(姜戎)

今年の最大の収穫は、リチャード・パワーズという作家を知ったことですし、イアン・マキューアン贖罪も、コニー・ウィリス航路も素晴らしかったけど、新刊(2007/11出版)ということを優先して、この本を選びました。

文化大革命時代に内モンゴル下放された青年が、草原とともに生きる遊牧民の暮らしと、遊牧民の最大の敵ながら崇拝を受けている「オオカミ」に魅せられていきます。草原の優しさと激しさ、子オオカミとの心の交流、近代化と農耕による草原の破壊・・。著者の自伝的体験が、生涯にたった一冊生み出した、魂のこもった「奇跡の小説」です。


短編小説部門

見知らぬ場所(ジュンパ・ラヒリ)

去年のジュディ・バドニッツのような強烈な印象こそありませんが、円熟を感じる短編集。既刊の2冊は、異邦で暮らすベンガル人2世が感じる戸惑いを鋭く切り取った小説でしたが、本書ではそれが「普遍的な人間関係」に高められているようです。夫婦の微妙なすれ違いを描いて「どこも似たように怖ろしい」と締めくくった一文に「感電」!


ノンフィクション部門

大冒険時代(マーク・ジェンキンズ編)

ノンフィクションではいい本がたくさんあったけど、文句なしにこの本で決まり。「世界が驚異に満ちていたころ 50の傑作探検記」との副題が、本書の全てを語っています。 19世紀末から20世紀初頭にかけて「National Giographic」に掲載された冒険旅行記の抜粋。 過酷な砂漠や峻峰、エキゾチックな風習、息をのむ絶景、楽園の生活・・今ではもはや味わえない旅のスリルとロマンをたっぷり楽しめた本でした。


日本の小説部門

新世界より(貴志祐介)

おそろし(宮部みゆき)とどちらにするか迷ったけど、新鮮さを買いました。決して明るくはない人類の未来像を示して「人間性への警鐘」とする主題は特に斬新ではないし、ちょっとグロい部分もあったけど、ミノシロモドキや悪鬼や業魔などの道具立ては素晴らしく、ブタネズミの正体も完全に意表を衝いてくれました。子どもたちの心理描写も良かったですね。


今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。
来年もいい1年にしたいものです。家庭も、仕事も、読書もね。^^