りぼんの読書ノート

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警察署長(スチュアート・ウッズ)

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佐々木譲警官の血がこの本と較べられていましたが、オリジナルを読んでいませんでした。でも「似て非なる物語」との印象を持ちましたので、ここでは比較しないでおきましょう。

ジョージア州の田舎町デラノを舞台にした、1920年から44年間に渡る、三代の警察署長の物語・・なのですが、本書の主人公はこの間ずっとデラノの有力者として州の上院議員を務めたホームズ氏であり、彼に見守られながらアメリカンドリームの頂点ともいえる大統領を目指す、初代警察署長ウィル・ヘンリーの息子ビリーであるようです。いや、真の主人公は、この間の黒人の地位の向上や、田舎町からも大統領をも目指せるという、アメリカの民主主義発展の歴史と言ったほうがいいのかもしれません。

話を急ぎすぎました。不審の農場に見切りをつけて初代警察署長となった、実直なウィル・ヘンリーは、郊外の山中で発見された若者の全裸死体に不審を抱きますが、犯人を見つけ出した瞬間に思わぬ出来事に襲われてしまいます。

第二次大戦から復員したサニー・バッツは、残忍な性格でありながら署長に抜擢されるのですが、やがて、彼の常軌を逸したかのような行動は明るみに出され、批判を浴びることになります。功を焦ったサニーは、過去の殺人事件の犯人にたどり着くのですが、思わぬ罠に落ちるのです。

公民権運動が起きた60年代、既に州副知事となっていたビリーの支援を受けて南部で初めての黒人署長となったのはタッカー・ワッツ。彼には物語の前半から続いている意外な過去があり、差別主義者の陰謀に絡め取られそうになるのですが、やはり過去から続く連続殺人事件の解明が彼とビリーを救うことになります。

時代背景こそ違え、ビリーのモデルは、やはりジョージアの田舎町から大統領にまで上り詰めたジミー・カーターだそうです。著者は実際にカーターの応援をしていたとのこと。ビリーの夢は、実現したのでしょうか・・。この本が素晴らしい作品に仕上がっているのは、登場人物が、歴史的にも地理的にも、きっちり位置づけられて、細部まで描かれているからですね。

2008/12