りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

日と月と刀(丸山健二)

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『千日の瑠璃』以来、10年ぶりくらいに丸山さんの本を読みました。なぜ、ひさびさかって? そりゃあ、その本がおもしろくなかったからです。瑠璃色の魂を持つ脳性麻痺の少年とオオルリとの間の千日にわたる交流を千の視点から綴った観念小説的な物語だったのですが、「高尚な文章」と「単調な物語」の組み合わせというのは、読んでてつらいものがありますね。

で、うっかり本書を読んでしまいましたが、やっぱりおもしろくありませんでした。とはいえ、観念小説ではなくて物語性があった分、まだマシだったかな。戦火のなか生まれ落ちた、生涯名前を持たなかった「無名丸」という男が、流浪の人生を経て絵師へと生まれ変わるまでの物語。早成の天才剣士であった無名丸が、「星の剣」と「草の剣」というふた振りの名刀を友に、惨殺された母への復讐と、まだ見ぬ父への思慕に駆られて、流浪の旅に出ます。

彼が訪れ、出会うのは、やがて津波に飲まれることになる不思議な女人の館であり、盲目の琵琶法師であり、病で異常な姿となった姫君であり、都で米相場を操作する大商人であり、白拍子であり、高僧であり、将軍であり、それこそ「時代」を何らかの形で象徴する存在。全てを見尽くした数奇な運命の末に彼は、晩成の鬼才絵師となって、日輪と月輪に導かれ、生涯ただ一作の屏風絵を完成させて、人生の終焉にたたずむのです。

やっぱり「高尚な文章」と「単調な物語」の組み合わせは、つらかった・・。しかも単行本上下巻で900ページもあるんですよ!

2008/5