りぼんの読書ノート

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無実(ジョン・グリシャム)

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リーガル・サスペンスの第一人者であるグリシャムさんによる、初のノンフィクションです。本書で扱われているのは、ズバリ「冤罪」。

1982年にオクラホマの田舎町で起きた、ウェイトレスのレイプ殺人事件。警察の捜査は行き詰っていましたが、事件から5年もたって、地元の元野球選手とその友人が唐突に逮捕されます。物的証拠は皆無。大リーガーになるという夢が破れた青年の、日ごろの荒んだ暮らしぶりから、捜査官が「犯人と決め付け」て逮捕して強引に自白を強要。裁判では、でっちあげた証人とお粗末な科学捜査によって、死刑の判決が下されます。12年に渡る刑務所暮らしで、すっかり精神も蝕まれていった被告に一条の光明が指したのは、DNA鑑定という新たな技術でした・・。

本書では、2つの問題が指摘されています。ひとつは、陪審制度の問題点。リーガル・サスペンスでは、弁護士と検察が、互いに証拠と弁論を駆使して陪審員の説得を試み、論理的に有罪無罪を証明していくあたりが「見せ場」なのですが、実際には「心情」でほとんど決まってしまうかのような怖さを感じます。犯罪の悲惨さを強調する現場の写真と、容疑者の性格描写だけで、有罪が決まってしまうことも多いようです。「推定無罪」が原則なのに・・。

もうひとつは、一旦下された判決を覆すことの困難さ。被告を救済する制度が整っているアメリカですら、それを覆すのに12年もかかったのです。日本でも裁判員制度が導入されようとしていますが、有効に機能するのでしょうか。弁護士報酬を吊り上げる効果しかもたらさないような気もするのですが・・。

2008/4