りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

無罪(スコット・トゥロー)

イメージ 1

法廷小説の定義を覆し、ハリソン・フォード主演で映画化もされた名作推定無罪の直接の続編では、あの事件の登場人物たちが23年後に再び一堂に会します。

女性検事補キャロリン殺害事件の裁判で無罪を得たラスティ・サビッチは上訴裁首席判事に上り詰め、60歳にして州最高裁判事の最有力候補となっています。弁護を務めたサンディ・スターンは『立証責任』の事件を経て弁護士会の巨星に、屈辱的な敗北を喫したトミー・モルトは復活を果たして地方検事代行となっていました。そして長い間、深い闇の中をさまよっていたかのような真犯人は・・。

そんな中でラスティが長年連れ添った妻バーバラが変死。遺体の発見から通報までに1日の空白があったことに疑惑を抱いた検事局は捜査を開始し、ラスティに愛人がいたことなど状況証拠が積み重なる中で、ついにトミーは訴追を決意。因縁の法廷が幕を開けます。

読者はまず、あの事件の後でもラスティとバーバラが連れ添い続けていたことに驚かされます。ラスティが再び後輩の女生と不倫関係に陥ったことも、この夫婦の下で育ったにもかかわらず一人息子のマットが法曹の道を歩み始めた好青年であることも驚きですが、最大のサプライズは前作で悪役だったトミーの実像が、正義と倫理を強く求める人物であったことかもしれません。

かつては真実を知らないまま訴えられて当惑したラスティでしたが、今回は全てを知った者として被告席についています。しかし、彼が語ろうとしない真実とは何なのでしょう。すべてがさらけ出され、ギリギリの答弁を求められる法廷で、真実を語らない者はその報いを受けねばなりません。たとえその動機が何であったとしても・・。そして明らかにされる驚愕の真実。名作の続編の名に恥じない作品です。

2013/7