「検屍官シリーズ」も第19弾になりました。ひところは全くつまらなくなっていたのですが、最近また初期のおもしろさが戻ってきたように思えます。
前作『変死体』で、ケイの長年の同僚フィールディングが死亡した事件は、まだ尾を引いています。父親であったフィールディングを殺害し、ケイを襲った犯人として逮捕された殺人鬼ドーン・キンケイドは無罪を主張しているどころか、正当防衛を主張して逆にケイを告訴するとの動きもあるというのですから。
ケイはジョージア州女子刑務所に収監されているドーンの母親キャスリーンを面会に訪れますが、それはニューヨーク州検事補だったジェイミー・バーガーが仕組んだものでした。しかもケイの組織で働いているマリーノも彼女に唆されてその企みに加わっていたのです。
ジェイミーは、9年前に現地で起きた一家惨殺事件の現場からドーンのDNAが検出されたことを理由に、有罪判決を下されていた死刑囚ローラの再審を求めようとしていました。刑務所での受刑者虐疑惑や、ケイがFBIから捜査対象になっていることを持ち出して強引に協力を求めるのですが、事件は複雑さを増していきます。
ケイが面会したばかりのキャスリーンが急死、ニューヨークでドーン死亡の情報、さらにはジェイミーまでが変死体で発見され・・。ケイは一連の事件の背景に潜む、もうひとりの殺人鬼を見つけ出すことができるのでしょうか。
前半はさまざまな事態が手探り状態で進行し、後半で一気に解決に向かうという展開は、読者にストレスを感じさせますが、これは著者の「スタイル」ですね。ひとつの手がかりから、さまざまな謎が同時に解決していくという手際のよさを楽しむべき作品・・とうことは、もうわかっています。
2013/7