りぼんの読書ノート

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ナインスゲート(アルトゥーロ・ペレス・レベルテ)

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最近では『剣士アラトリステ』シリーズがフューチャーされているレベルテさんですが、以前はウンベルト・エーコのような作品も書いていたのですね。

スペインの稀覯本ハンターであるコルソに、同時に2つの奇妙な依頼が持ち込まれます。ひとつは、デュマの『三銃士』第42章の肉筆原稿の真贋調査。もうひとつは、中世に出版された奇書『九つの扉』の真贋判定。とりわけ『九つの扉』という本は、古代に悪魔自身が書いたとされる本の複製版とされ、3冊しか現存しないうちの1冊だけが本物だと言い伝えられているのです。

他の2冊の『九つの扉』を調査するうちに、挿絵の版画が微妙に異なっていることに気づくコルソですが、『三銃士』の登場人物を髣髴とさせる悪女や悪漢が現れて妨害をはじめます。(悪女はミレディーで、悪漢はロシュフォールですね。^^)2冊の所有者が相次いで殺害されて、コルソ自身も命を狙われる中で、彼を助ける不思議な美女も登場し、謎は深まる一方。

これは、2つの依頼に関係した、2つの別々の物語でした。そして、本書の「語り手」が意外な人物であったことも終盤に明らかにされます。『フーコーの振り子』のように、古書にまつわる知的好奇心を満足させてくれる作品です。ジョニー・デップ主演で映画化されましたが、そこでは『三銃士』に関するエピソードがすっかり省略されてしまっているとのこと。これでは物語に深みは出てこないでしょう。そもそも本書の最初の邦題は『呪のデュマ倶楽部』なんですから。残念です。

2008/4