りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

スペース・マシン(クリストファー・プリースト)

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19世紀末のイギリス。しがないセールスマンのエドワードは、大科学者の秘書アメリア知り合い、恋に落ちます。2人は博士の留守中に、博士が作り上げていたタイムマシンで未来に向かって時間旅行に出るのですが、行き着いた先の1903年で彼が眼にしたのは、アメリアが爆死する光景。

夢中で操縦棹を操作して、行き先も定めぬままにたどりついたのは、なんと火星でした。時間と空間の移動を分離する機能を持った、このタイムマシンは、空間を移動することもできるスペースマシンでもあったのです。

火星を支配していたのは、例のタコ型火星人であり、人類型の現地人はタコたちの奴隷にすぎないどころか、もっとおぞましい扱いを受けていました。火星人の地球侵略計画を知った2人は、現地人の反乱を組織するとともに、火星人の宇宙船に乗り込んで地球へと向かおうとするのですが・・。

ご存知の古典SF、H.G.ウェルズの『タイムマシン』と『宇宙戦争』を組み合わせたオマージュ作品です。終盤で科学者の知人として「ウェルズ氏」という人物を登場させ、ウェルズが両作品を書き上げた元ネタが本書であるとほのめかすあたりも、絶妙。

『タイムマシン』の主人公は「恋人の死」という運命を変えることができませんでしたが、エドワードは、アメリアが爆死する未来を変えることができたのでしょうか。また『宇宙戦争』で火星人の侵略から地球を防いだのは地球の生態系だったのですが、スペースマシンも活躍する、楽しくてロマンに満ちた作品に仕上がっています。

2008/4