りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ドゥームズデイ・ブック(コニー・ウィリス)

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犬は勘定に入れませんより前に書かれた、タイムトラベルSFですが、パラドックスの起こりえない時間旅行の仕組みや、オクスフォード大学の史学部が時間旅行を管理しているとかの枠組みは、すでにこの作品で出来あがっています。ピント外れの所で一生懸命になる助手のフィンチは、両作品に登場してますよ。

21世紀半ばオクスフォード大学史学部の女子大生キブリンは、実習の一環として従来はトラベルが認められていなかった14世紀に送られるのですが、万全の予防をしたにも拘らず、中世に到着直後原因不明の熱病に倒れてしまいます。

一方、キブリンを送り出した直後のオクスフォードでも同じ症状が広まるのです。感染原因が14世紀に流行したウィルスと同定されるに至って、タイムトラベルは危険視されてしまい、キブリンの回収作業も中断。タイムトラベルは史実に影響を与えないよう、ウィルスを通過させないはずなのに・・。

中世のキブリンには、さらに難関が襲い掛かります。小さな村に非難していた小領主の一家に助けられて看病されていたのですが、なんと当時のヨーロッパの1/2から1/3を死滅させたペストの大流行が迫ってくるのです。「降下地点」はペスト流行の20年以上も前に設定されたはずだったのに・・。

21世紀への帰還も絶望的となりいまや大切に思うようになった人々も次々に倒れていく中で、奇跡を信じて献身的に看病を続けるキブリンに救出の手は届くのでしょうか。

タイムトラベル・パラドックスの謎解きは、本書では大きな比重を占めてはいません。14世紀の本格的な悲劇と対比させるように描かれる21世紀のドタバタ劇を含め、ここで描かれているのは人間のドラマであり主人公キブリンの成長物語です。

彼女の作品はどれも高水準で期待を裏切りませんね。次は航路を読もうと思ってます。

2008/1/27読了