りぼんの読書ノート

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大聖堂-果てしなき世界 上(ケン・フォレット)

物語の舞台は14世紀のイングランド、キングスブリッジ。12世紀の物語である『大聖堂』と16世紀の物語である『火の柱』を繋ぐ作品です。馴染みの薄い時代ですが、王位継承に係る事件、英仏百年戦争の開始、ペストの流行という重い史実と関連しながら物語は進んでいきます。

 

主な主人公は4人。ひとりめは12世紀に大聖堂の建築を志したトム・ビルダーの直系の子孫である羊毛商人の娘カリス。聡明で自立した女性であるカリスは、当時女性には開かれていなかった医学の道に進もうとしたことで、修道院との間に軋轢と摩擦を引き起こしていきます。ふたりめは大聖堂を完成させたトムの義理の息子ジャックの子孫でありながら没落騎士となった父親を持つマーティン。やがて天才的な建築技師となるものの保守派に妨げられ、相思相愛となるカリスとの関係も前途多難。

 

3人目はマーティンの弟のラルフ。兄と違って武闘派のラルフは騎士となって中世社会の階梯を駆け上がろうと志しますが、手段を選ばないために悪役となっていきます。4人目は貧農の娘グウェンダ。偶然出会ったカリスたちと親しくなったものの、父親に売り飛ばされそうになります。彼女はハンサムな農夫ウルフリックへの一途な恋を貫き通しますが、2人は後に領主となるラルフと衝突する運命にありました。

 

上巻は成長した主人公たちが、それぞれの進路を定めるまでの物語。街の出入り口である橋が崩壊して、多くの死傷者が発生したことがきっかけでした。人々の手当に奮闘したカリスは医学の道を志し、マーティンに従属する妻となることを拒否。マーティンは橋を架けかえる独創的なアイディアを立案し、ラルフは騎士見習いとしてジャックの直系の子孫であるシャーリング伯に仕え始めます。グウェンダは事故で家族も土地も失ったウルフリックと結ばれますが、2人の前途は厳しそうです。

 

2022/8