1.サピエンス全史 上下(ユヴァル・ノア・ハラリ)
他の動物や人類の中でのサピエンスの優位を確立した「認知革命」と、人口と富を増大させてグローバル化への道筋をつけた「農業革命」と、さらに爆発的な変化をもたらした「科学革命」は、人類を幸福に導く行程だったのでしょうか。それとも幸福感の定義すら、既に歪められてしまったのでしょうか。先入観や固定観念を覆す知的冒険へと読者を誘う本書は、さらに「サピエンスの次に来るもの」との問題まで提起します。直面すべき真の疑問は「私たちは何を望みたいのか?」かもしれないというラストの一文まで衝撃的です。
2.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 1.2(ブレイディみかこ)
アイルランド系の英国人男性と結婚して、ブライトンという海辺の町で保育士もしているライターの著者が、中学生の息子と一緒になってさまざまな問題を考えていくノンフィクションは、2019年の本屋大賞「ノンフィクション本大賞」を受賞しました。人種問題や貧富の差が日本よりはるかに先鋭化している英国でさまざまな体験をする中で、黄色人種と白色人種の混血であることを「イエローでホワイトで、ちょっとブルー」と言っていた息子と一緒に、著者も成長していくのです。
3.グリーン・ロード(アン・エンライト)
ニューヨークのゲイコミュニティの中に居場所を見つけた長男。地元で結婚して3人の子供の世話に振り回されている長女。途上国支援に身を捧げて限界を痛感している次男。女優になったものの出産して休業中の次女。中年になった4人の子供たちは「家を売りたい」という老母の手紙に驚いて、久しぶりに実家に集まるのですが・・。風光明媚なアイルランド西海岸を舞台にして、母親と子供たちの再会を中心に据えた家族ドラマですが、身につまされることも多い作品でした。
【次点】
・母の待つ里(浅田次郎)
【その他今月読んだ本】
・15秒のターン(紅玉いづき)
・ヘーゼルの密書(上田早夕里)
・残月記(小田雅久仁)
・亥子ころころ(西條奈加)
・オールドレンズの神のもとで(堀江敏幸)
・興亡の世界史19.空の帝国アメリカの20世紀(青柳正規編/生井英考著)
・ヴァイゼル・ダヴィデク(パヴェウ・ヒュレ)
・興亡の世界史20.人類はどこへ行くのか(青柳正規編)
・説教したがる男たち(レベッカ・ソルニット)
・青いパステル画の男(アントワーヌ・ローラン)
・混沌の城 上下(夢枕獏)
・こうしてイギリスから熊がいなくなりました(ミック・ジャクソン)
・愚者の階梯(松井今朝子)
・不死鳥と鏡(アヴラム・デイヴィッドスン)
・流浪蒼穹(郝景芳(ハオ・ジンファン))
・くらやみガールズトーク(朱野帰子)
・世界SF作家会議(早川書房編集部/編)
・掌に眠る舞台(小川洋子)
2023/7/30