りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

説教したがる男たち(レベッカ・ソルニット)

『災害ユートピア』で日本でも有名になった著者による、フェミニズムをテーマとした強烈なエッセイです。ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で紹介されていたので、読んでみました。

 

のっけから男性に対して手厳しい。「説教したがる男たち現象」とは、男が女を見下した態度で、不正確で自信過剰な説教をすることであり、このエッセイをきっかけとして「マンスプレイニング」という言葉が広がったとのこと。日本で流行った言葉としては「男性からのクソバイス」が近いニュアンスでしょうか。著者は自身の体験として、彼女自身の本について、著者も内容もろくに知らない男性から滔々と説明を受けたことを挙げています。

 

しかし著者はそこにとどまりません。「説教したがる男たち」による挫折や徒労感やフラストレーションを出発点として、女性を対象とした暴力や殺人という深刻な社会問題を論じていきます。女性が日常で味わう小さな経験が、もっと大きな脅威や危機に繋がっていると指摘するのです。USAでは6分間に1度レイプが起きて、5人にひとりの女性がレイプされた経験を持ち、9秒間に1度の頻度で女性が殴られて、女性の怪我の原因の第1位であるのに、訴訟されて有罪になったケースがいかに少ないことか。女性たちが身体的暴力の被害者であると同時に、発言を信じてもらえることが少ないことの背景には、女性蔑視や女性嫌悪があるのでしょう。

 

考察の対象を広げていくと、ニューデリーで起きたバスの中での集団レイプをはじめとして、よりひどいケースが世界中で頻繁に起こっていることに気付かされます。そして同じようなことは、過去の名画の中でも、バージニア・ウルフの小説世界の中でも起きているのです。もちろん著者は全ての男性を敵視しているわけではありませんが、男性優位社会のあり方や思想が問われているわけです。本書が出版された2014年は、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』やロクサーヌ・ゲイの『バッド・フェミニスト』も刊行された画期的な年であったとのこと。後者は未読でしたが、これを機に読んでみようと思います。

 

2023/7