りぼんの読書ノート

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僕の狂ったフェミ彼女(ミン・ジヒョン)

ミソジニー文化が深刻である韓国では、一部の男性にとって「フェミニズム」が絶対悪の代名詞のように思われているとのこと。日本でも似たような状況なのですが、一部のSNS以外ではそれを公言しにくい環境である分、まだマシかもしれません。本書はフィクションですが、「現代社会に蔓延する性差別や現実の事件と切り離すことのできない小説」であり、主人公の「彼女」が直面する問題は誰もが経験しうる普遍的なことなのでしょう。本書では「彼女」の名前は書かれていません。

 

物語は、毎日のように怒りと恐怖を感じているフェミニストの女性に恋してしまった、プチ・アンチフェミの男性の一人称で綴られていきます。実は彼はインターンの機会を得た際に彼女から別れを告げられていたのですが、帰国後に交際を再開。しかしその時彼女はフェミニストに変貌していたのでした。価値観の異なる2人の間で恋愛は成立するのでしょうか。そして彼の価値観が変わることはあるのでしょうか。終始語り手である男性は、フェミ彼女を「普通の女性」に戻そうと奮闘するのですが・・。

 

韓国人女性である著者は「30代フェミニストの恋愛はまるで『ウォーキング・デッド』だ」と語っています。自分以外の生存者を探すには出ていかねばならないが、外にはゾンビがウヨウヨしていて、言葉が通じる人と出会える確率はおそろしく低い。つまり、自分らしく生きたいという欲求と、誰かとともに生きたいという欲求が正面衝突しているというのです。確かに厳しい。

 

主人公の男性はまだ迷いの段階に留まっていますが、彼のエリート親友たちの妻たちが、フェミ彼女と出会った後の反応は早かったですね。夫や婚家に従順で、家事を完璧にこなし、いつも美しくしている「理想の妻」たちが、夫に反撃し始めたのです。ハッピーエンドに至る未来へのヒントかもしれません。大多数の女性が変われば、男性だって変わらずにはいられないのですから。

 

2022/10