通史として「世界史」をシリーズで読んだのは、これで3回目。はじめは1978年に出版された中央公論社刊『世界の歴史(全16巻+別冊1巻)』。次が2003年に出版された創元社刊『世界の歴史(全10巻)J・M・ロバーツ著』。そして今回が2007年から2009年にかけて出版された講談社刊のこのシリーズになります。あらためて思うのは構成と視点が大きく変化していること。
J・M・ロバーツ氏のシリーズは1976年の著作を改訂し続けたものであり、中央公論社のシリーズとほぼ同年代といえるでしょう。どちらも当時の歴史研究成果の最先端を取り入れていたものの、各国史を年代順に並べたような構成であり、西洋中心の視点で書かれていたように思います。もちろん世界史の入門編としては優れたものであり、歴史を読むことの面白さを教えていただきました。
このシリーズは、政治・経済・環境などのあらゆる課題がグローバル化した時代において、俯瞰的かつ複眼的な視点をもって、「文明論的な射程をもった議論と対話を起こしていく」ための試みでした。序論にあたる『第0巻』で、「時代ごと、国ごとではなく、もっと広い視野でとらえ直してみる」ことで「世界史のダイナミズム」を読み取るために、「物語性や文明の優劣比較とは距離をおき、それぞれの文明のあるがままの姿に迫る」との方針が示されていました。2021年に出版が開始されてまだ刊行中である岩波講座「世界歴史(全24巻)」は、どのような視点で綴られているのでしょう。ロシアによるウクライナ侵攻は反映されるのでしょうか。
最終巻である本書では「これからの人類の進むべき道を問うために、現代人が直面している課題のありかを明確にする」ために、「ここまでの巻では十分に通観できなかった問題域」として、人口と資源、海と人類、宗教と社会、アフリカの現状、世界史の中の日本という問題が取り上げられています。各章の内容に触れていくとメモの域を超える長文になってしまいますので、タイトルと筆者名だげ記しておきます。
はじめに(福井憲彦)
第1章 世界史はこれから―日本発の歴史像をめざして(杉山正明)
第2章 「一〇〇億人時代」をどう迎えるか―人口からみた人類史(大塚柳太郎)
第3章 人類にとって海はなんであったか(応地利明)
第4章 「宗教」は人類に何をもたらしたか(森本公誠)
第5章 「アフリカ」から何がみえるか(松田素二)
第6章 中近世移行期の中華世界と日本―世界史のなかの日本(朝尾直弘)
第7章 繁栄と衰退の歴史に学ぶ―これからの世界と日本(青柳正規、陣内秀信、ロナルド・トビー)
2023/7