りぼんの読書ノート

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テルマエ戦記(ヤマザキマリ)

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テルマエ・ロマエ』で一躍有名漫画家となり、最近では塩野七生さんに変わってイタリアに詳しい文化人の役割を担っているヤマザキマリさんのエッセイです。ローマと日本の比較風呂文化論ともいえる独創的なマンガが生まれ出た背景から、それが大ヒットとなって映画化されるあたりまでの日々の雑感を綴っていたブログをまとめたものであり、巻末には『テルマエ・ロマエ』が生まれるきっかけとなった作品「VICTORIA」も収録されています。

 

ヤマザキマリさんという魅力的な方は、なかなかの人生を歩んできたようです。17歳で高校を中退してイタリアに渡り、美術史と油絵を学んでいる間に売れない学生詩人と恋愛。シングルマザーとなって生活費を稼ぐために漫画を描きはじめ、一時帰国の際にはイタリア語講師やレポーターを努めた後に14歳年下のイタリア人文学研究者と結婚。夫とともにシリア、リスボン、シカゴで暮らした後に、イタリアに帰国。『テルマエ・ロマエ』は、リスボン時代に生まれた作品だそうです。

 

はじめは一話読み切りのつもりが、好評で第二話が依頼されて長編となり、そして映画化。絵にかいたようなサクセスストーリーですが、第1話と第2話の間が10カ月も空いていたとのことで、あれよあれよという感じではなかったようです。本人としては楽しそうなことを描いてみただけという雰囲気が、本書から伝わってきます。ご本人は、「風呂なしの生活につらさを極めていた結果生まれた、欲求不満疑似体験作品」と言っているのですが。

 

2022/2